NIPTでみる「トリソミー」とは? 21・18・13を一度に解説
- トリソミーとは: 本来2本対である染色体が「1本多く3本」存在する状態のことです。
- なぜ21・18・13の3つなのか: 常染色体のうち出生に至り得る代表的な疾患であり、医学的な意義と臨床データが確立しているためです。
- 疾患ごとの特徴と予後: ダウン症(21)は多くが成人へ成長する一方、18・13は重篤な合併症を伴いやすく、早期の把握と準備が重要になります。
を一度に解説監修・執筆:医師 山名啓太NIPT を検討される中で、「トリソミー」という言葉を目にする機会は多いと思います。とくに「21 トリソミー」「18 トリソミー」「13 トリソミー」という3 つの数字は、パンフレットや同意書、クリニックのホームページなど、あちこちで登場します。実はこの3 つは、日本のNIPT の中心となっている疾患です。「なぜこの3 つが選ばれているの?」「どんな病気なの?」。そんな疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。この記事では、3 つのトリソミーそれぞれについて、「どんな染色体異常なのか」「どのくらいの頻度でみられるのか」「どのような症状や経過が知られているのか」を、一度にやさしく整理していきます。そもそも「トリソミー」ってどういう意味?人間の細胞の中には、体をつくる設計図である「染色体」が23 組・全部で46 本入っています。1〜22 番までの常染色体と、性別に関わる性染色体(X・Y)で構成されており、通常は同じ番号の染色体が2 本ずつペアで存在しています。この染色体が、なんらかの偶然で「1 本多く3 本」になってしまった状態を『トリソミー』と呼びます。「トリ(tri=3)」+「ソミー(chromosome=染色体)」から来ている言葉で、そのまま『染色体が3 本』を意味しています。どの染色体でも、トリソミーになる可能性そのものはありますが、多くのトリソミーは受精や妊娠初期の段階で自然に淘汰され、妊娠として続きにくいことが知られています。そんな中で、比較的よくみられ、赤ちゃんが生まれるまで妊娠が続く可能性がある常染色体トリソミーとして知られているのが、21・18・13 の3 つなのです。
- 「トリソミー=染色体が1 本多い状態」を指します。
- 多くのトリソミーは妊娠初期で自然に淘汰されますが、21・18・13 の3 つは出生に至る可能性がある常染色体トリソミーとして知られています。
なぜ、21・18・13 の3 つがNIPT の対象なのでしょうか日本のNIPT は、日本医学会「出生前検査認証制度」のもとで運営されており、認証施設におけるNIPT の対象疾患は、13 トリソミー・18 トリソミー・21 トリソミーの3 疾患と定められています。厚生労働省の専門委員会報告書でも、「NIPT の対象疾患は 13・18・21 トリソミーの3疾患である」ことが明記されています。この3 つが対象とされている背景には、大きく次のような理由があります。
- ヒトで出生に至り得る常染色体トリソミーは、主に 21・18・13 であること
- 3 疾患それぞれについて、多くの臨床データが蓄積されており、NIPT の検査精度や結果の解釈が確立されていること
- 赤ちゃんの健康や、生まれてからの療育・医療体制を考えるうえで、早めに把握しておく意義が大きい疾患であることつまり、「たまたま3 つが選ばれた」わけではなく、「妊娠中に把握しておくことに医学的な意義があり、かつ検査精度も十分に確立されている疾患」として、この3 つが選ばれているということになります。
3 つのトリソミーは、どのくらいの頻度でみられるのでしょうか「一度に3 つ調べると聞くと、なんとなく珍しい病気を3 つまとめて…というイメージを持つかもしれません。でも実は、それぞれの発生頻度には、なかなかの差があります。
21 トリソミーは、21 番染色体が3 本になることで起こる疾患で、一般には「ダウン症」「ダウン症候群」の名前でよく知られています。1866 年にイギリスの医師 John Langdon Down(ダウン博士)がこの疾患について報告したことから、この名前がつけられました。特徴と経過ダウン症は、染色体異常による疾患の中で最も頻度が高い疾患です。誰にでも発症する可能性がある一方で、母親の年齢が高くなるほど出生頻度が上がることが知られています。症状としては、成長・発達の遅れ、知的障害、特徴的な顔つき、筋肉の緊張の低さなどがみられ、先天性心疾患などの合併症を伴うこともあります。症状には個人差があり、幅も広いのが特徴です。医療の進歩により、近年ではダウン症の方の平均寿命は約60 歳と長くなっており、多くの方が成人まで成長し、社会の中でご自身らしい生活を送られています。3 つのトリソミーの中では、予後が最も良好とされる疾患です。母親の年齢と出生頻度ダウン症は、母親の年齢が高くなるほど出生頻度が上がることが知られています。下のグラフは、母親の年齢別のダウン症出生頻度をまとめたものです。
赤ちゃんは生まれる前から成長・発育の遅れがみられることが多く、生まれた後も、心疾患・呼吸器系・消化器系など、複数の重い合併症を持つことが少なくありません。そのため、生後の医療的な集中管理が非常に重要な疾患です。一般的な経過としては、生後1 週間以内に亡くなる例が半数以上とされ、生後1 年まで生存できる割合は10%程度と報告されています。一方で、近年は新生児集中治療の進歩によって、1 歳を大きく超えて成長される例や、20 歳を超えるお子さんの報告も出てきています。13 トリソミー(パトウ症候群)13 トリソミーは、13 番染色体が3 本になることで起こる疾患で、「パトウ症候群」とも呼ばれます。1960 年に Klaus Patau(パトウ博士)らによって報告されました。こちらも、国が指定する指定難病のひとつです。特徴と経過出生頻度は5,000〜12,000 人に1 人程度と報告されており、18 トリソミーと同じく、母親の年齢が高くなるほどリスクが上がることが知られています。また、13 トリソミーと診断されたケースの多くは、妊娠中に自然流産や死産となることも報告されています。主な症状としては、頭部の形成に関わる異常(小頭症、小眼球症、口唇口蓋裂など)、心臓の奇形、多指症など、身体的な特徴が広範囲におよぶことが特徴です。18 トリソミーと同様に、複数の合併症を持って生まれることが多く、生後の医療的なケアが非常に重要になります。一般的な経過としては、生後1 か月以内に亡くなる例が約80%とされ、1 年以上生存できる割合は10%未満と報告されています。こちらも、集中治療の進歩によって、1 歳を超えて成長される例が徐々に増えてきています。3 つのトリソミーを、表で並べて比較ここまでの内容を、3 疾患を横に並べた比較表で整理してみます。項目21 トリソミー18 トリソミー13 トリソミー別名ダウン症候群エドワーズ症候群パトウ症候群原因となる染色体21 番染色体が3 本18 番染色体が3 本13 番染色体が3 本
項目21 トリソミー18 トリソミー13 トリソミー出生頻度1,000 人に1 人3,000〜10,000 人に1 人5,000〜12,000 人に1 人性別の傾向とくに大きな差はない女児に多いとくに大きな差はない主な症状・特徴成長・発達の遅れ、知的障害、特徴的な顔つき、先天性心疾患 など成長障害、心奇形、呼吸器・消化器の合併症、特徴的な手指の形 など小頭症、小眼球症、口唇口蓋裂、心奇形、多指症 など一般的な経過多くの方が成人まで成長。平均寿命は約60 歳。予後は3 疾患の中で最も良好。生後1 週間以内に亡くなる例が半数以上。1 歳まで生存する割合は10%程度。生後1 か月以内に亡くなる例が約80%。1 年以上生存する割合は10%未満。指定難病指定なし指定難病指定難病
「18・13 トリソミーは、初めて知りました」というお声も多くいただきますダウン症については、テレビやSNS、ご家族・ご友人のお話などから、ある程度のイメージを持っている方が多いように感じます。一方で、18 トリソミーや13 トリソミーについては、「今まで名前も聞いたことがありませんでした」「知らなかったので、話を聞いて驚きました」というお声も、実際の診察の中でよくいただきます。「知ってみたら、思っていた以上に大切な検査だと感じました」「ダウン症だけかと思っていたけれど、3 つとも受けておきたいと思いました」。そんなご感想を持たれる方も多くいらっしゃいます。
もちろん、どの検査を受けるか・受けないかは、ご自身とパートナーの方の考え方によるところが大きいです。ただ、「そもそもどんな疾患があって、なぜNIPT の対象になっているのか」を知ったうえで判断していただくことは、納得のいく選択のためにとても大切だと考えています。まとめ最後に、この記事の要点をまとめます。
- 「トリソミー」とは、本来2 本ずつある染色体が「1 本多く3 本」になっている状態を指します。
- 多くのトリソミーは妊娠初期に自然に淘汰されますが、21・18・13 の3 つは出生に至る可能性がある常染色体トリソミーとして知られています。
- 日本のNIPT は、日本医学会「出生前検査認証制度」および厚生労働省の方針のもと、この3 疾患を対象として実施されています。
- 頻度は、21 トリソミー(ダウン症)が1,000 人に1 人と最も高く、18・13 トリソミーはより低頻度です。とはいえ、3 つを合わせて考えると「決してごく稀」ではありません。
- 経過は3 疾患で大きく異なり、ダウン症は多くの方が成人まで成長する一方で、18・13 トリソミーは重い合併症を伴いやすく、生後の集中的な医療ケアが重要となります。妊娠中に3 つの疾患について知っておくことは、「もしも」に備える意味だけでなく、生まれてくる赤ちゃんへのケアや療育、ご家族としての心構えを考えるうえでも、大切な情報となります。気になることがあれば、どんなに小さなことでもどうぞお尋ねください。医師との診察では、医学的なご相談もお気軽にどうぞ。
- プレママクリニック 公式サイト
- プレママクリニック「ダウン症について」
- プレママクリニック「エドワーズ症候群について」
- プレママクリニック「パトウ症候群について」
- 公益社団法人日本産科婦人科学会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針」
- https://www.jsog.or.jp/news/pdf/NIPT_kaiteishishin.pdf
- 出生前検査認証制度等運営委員会/日本医学会「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは」
- prenatal.jp/testing/nipt/
- 厚生労働省「NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書」
- https://www.mhlw.go.jp/content/000783387.pdf
- 厚生労働省「NIPT の対象とされるトリソミーについて」
- https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000587240.pdf
- 日本小児科学会「Down 症候群 診療ガイドライン」
- https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240130_GL009.pdf
- 小児慢性特定疾病情報センター「18 トリソミー症候群」
- https://www.shouman.jp/disease/details/13_01_012/
- 小児慢性特定疾病情報センター「13 トリソミー症候群」
- https://www.shouman.jp/disease/details/13_01_013/
- Morris JK, Mutton DE, Alberman E. Revised estimates of the maternal age-specific live birth prevalence of Down’s
- syndrome. J Med Screen. 2002;9(1):2-6.
- Gil MM, Accurti V, Santacruz B, Plana MN, Nicolaides KH. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening
- for aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2017;50(3):302-314.
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28397325/
- Peroos S, Forsythe E, Pugh JH, et al. Longevity and Patau syndrome: what determines survival? BMJ Case Rep.
- 2012.
- 日本ダウン症学会「成人期ダウン症診療ガイドライン 日本語版」(2022 年12 月公開)
- https://japandownsyndromeassociation.org/adult-ds-guideline/
- MSD マニュアル プロフェッショナル版「18 トリソミー」
- jp/professional/19-
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