羊水検査とNIPTの違いをわかりやすく整理します
- 検査の役割の違い: NIPTは「母体への負担が少ないスクリーニング検査」、羊水検査は「白黒をはっきりさせる確定診断」です。
- 流産リスクの有無: NIPTは採血のみで流産リスク0。羊水検査はお腹に針を刺すため0.1〜0.3%程度の流産リスクを伴います。
- 順番に活用していく関係: まずNIPTで全体像を把握し、万が一陽性だった場合に羊水検査で最終確認を行うのが基本の流れです。
羊水検査とNIPT の違いをわかりやすく整理します監修・執筆:医師 山名啓太
妊娠中の検査について調べていると、「NIPT」「羊水検査」「胎児ドック」など、似ているようで内容が異なる検査の名前を目にすることがあります。その中でも特に混同されやすいのが、NIPT と羊水検査です。「どちらが正確なの?」「両方受ける必要はあるの?」「どう違うの?」このような疑問を持たれる方は少なくありません。このコラムでは、羊水検査とNIPT の違いを、できるだけやさしく整理してご紹介します。まず大きな違い:「確定検査」か「非確定検査」か羊水検査とNIPT のいちばん大きな違いは、検査の位置づけです。
- NIPT:非確定的検査。赤ちゃんの染色体に変化がある可能性をみる検査。採血で行う。
- 羊水検査:確定的検査。赤ちゃんの染色体の状態を診断する検査。お腹に針を刺して羊水を採取する。NIPT は、あくまで可能性をみる検査です。一方で羊水検査は、染色体の状態をほぼ確実に診断できる検査で、結果の正確性は非常に高いとされています。ただし、その正確性の代わりに、羊水検査には「侵襲的な検査である」というもうひとつの側面があります。羊水検査は侵襲的な検査である羊水検査は、お腹に細い針を刺して、子宮の中の羊水を採取し、その中に含まれる赤ちゃん由来の細胞を分析する検査です。検査結果の正確性はほぼ100%とされており、染色体の状態を確定的に診断できる、信頼性の高い検査です。
ただし、針を刺す検査である以上、母体や赤ちゃんへの負担がゼロではありません。特に知っておきたいのが、羊水検査には「一定の流産リスクが伴う」という点です。一般的には0.1〜0.3%程度の流産リスクがあると報告されています。数字としては小さく見えますが、検査を受けた直後に何か起きた場合、ご本人にとっては非常に大きな出来事になり得ます。日本国内における羊水検査数は、2013 年のNIPT 導入以降、緩やかに減少に転じています。国立成育医療研究センターが2026 年に公表した全国調査でも、羊水検査数は2012 年頃をピークに減少し、代わりにNIPT を受ける妊婦さんが大きく増えていることが示されています。
主なリスク流産・破水・感染など(流産率0.1〜0.3%程度と報告)受けられる時期一般的に妊娠15〜16 週以降結果が出るまで約2〜3 週間
NIPT は「採血のみ」で受けられる検査NIPT は、妊婦さんの血液中に含まれる赤ちゃん由来のDNA 断片を分析して、染色体の変化の可能性を調べる検査です。採血のみで行えるため、母体や赤ちゃんに直接針を刺す検査ではなく、流産リスクを伴いません。妊娠初期の比較的早い段階から検討しやすい検査でもあります。ただし、NIPT は確定診断ではないため、陽性だった場合には、改めて羊水検査などの確定的な検査で確認していくことになります。表2:NIPT の特徴項目内容検査の位置づけ非確定的検査(スクリーニング検査)方法採血のみ結果の正確性精度は高いが、確定診断ではない主なリスク流産リスクなし(採血のため)受けられる時期一般的に妊娠10 週以降結果が出るまで数日〜2 週間
NIPT と他の非確定的検査との違い非確定的検査には、NIPT 以外にも昔から行われている検査があります。代表的なものとして、母体血清マーカー検査(クアトロテストやトリプルマーカー検査)、コンバインド検査、そしてNT 計測などの超音波検査(エコー検査)が挙げられます。これらの検査も、流産リスクを伴わない非確定的検査です。ただし、検査の精度や得られる情報の内容には違いがあります。
ここで大切なのが「感度」と「特異度」という考え方です。
- 感度:実際に疾患を持っている方を「陽性」と正しく判定できる割合。感度が低いと、疾患があるのに陰性と判定されてしまう「見逃し」が増えてしまいます。
- 特異度:実際に疾患を持っていない方を「陰性」と正しく判定できる割合。特異度が低いと、疾患がないのに陽性と判定されてしまう「偽陽性」が増えてしまいます。表3:主な非確定的検査の比較(21 トリソミーの場合の目安)項目NIPTクアトロテストトリプルマーカーコンバインド検査超音波検査(NTなど)方法採血採血採血採血+超音波超音波主な対象13・18・21 トリソミー21・18 トリソミーなど21・18 トリソミーなど21・18 トリソミー21 トリソミーなど感度の目安99%以上80%前後65〜70%前後83%前後70%前後特異度の目安99%以上90%台90%台90%台90%台受けられる時期妊娠10 週以降妊娠15〜18週妊娠15〜18週妊娠11〜13週妊娠11〜13 週結果の見方陽性/陰性確率で表示確率で表示確率で表示所見・確率で表示流産リスクなしなしなしなしなし
数字だけを見ると、どの検査も大きくは変わらないように感じるかもしれません。ただ、感度の差は実際の見逃しの数に直結するため、検査の意味は大きく変わってきます。たとえばクアトロテストの感度は80%前後とされています。これは、わかりやすくいうと「実際にダウン症などを有している赤ちゃんが5 人いた場合、そのうち1 人は陰性と判定されてしまう可能性がある」ということを意味します。
トリプルマーカー検査はクアトロより検査項目が少ないため、感度はさらに低めとされており、見逃しはより起こりやすくなります。また、超音波検査(NT 計測など)は手軽に行える一方で、感度は70%前後とされており、検査者の技量にも左右される側面があります。一方でNIPT は、感度・特異度ともに99%以上と非常に高い水準にあります。そのため、非確定的検査の中でも、見逃しや偽陽性が起こりにくい検査として位置づけられています。「採血だけで受けられる」「流産リスクがない」という点は他の非確定的検査と同じですが、NIPT は得られる情報の質という意味で、より信頼度の高い手がかりを得やすい検査だといえます。
このように、ふたつは「順番に活用していく検査」と考えるとイメージしやすいです。
検査の選び方に正解はありません。ご自身やご家族にとって、何を知っておきたいか、どこまで確認しておきたいかによって、選ぶべき検査は変わってきます。当院でも、NIPT を検討される方には、検査内容や結果の見方について、ひとつひとつ丁寧にご案内するように努めています。気になることや不安なことがあれば、どうぞお気軽にお尋ねください。検査の流れについては、こちらもあわせてご覧ください。https://www.premama.clinic/flow/
- プレママクリニック 公式サイト
- https://www.premama.clinic/
- プレママクリニック 検査の流れ
- https://www.premama.clinic/flow/
- 公益社団法人日本産科婦人科学会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針」
- https://www.jsog.or.jp/news/pdf/NIPT_kaiteishishin.pdf
- 日本産科婦人科学会 NIPT 関連資料
- https://www.jsog.or.jp/news/pdf/NIPT_202301.pdf
- 出生前検査認証制度等運営委員会/日本医学会「NIPT を受けた10 万人の妊婦さんの追跡調査」
- https://jams-prenatal.jp/testing/nipt/follow-up-survey/
- 厚生労働省 NIPT 関連資料(NIPT コンソーシアム提出資料を含む)
- https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000559098.pdf
- 国立成育医療研究センター プレスリリース「NIPT 導入の前後10 年間における各出生前遺伝学的
- 検査を解析」(2026 年4 月9 日)
- https://www.ncchd.go.jp/press/2026/0409.html
- 佐々木愛子ら. 日本における出生前遺伝学的検査の動向1998-2016. 日本周産期新生児医学会誌
- 54:101-107, 2018.
- https://researchmap.jp/7000009354/published_papers/34142093
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